10月16日放送

 人が前に進む力って、どこからどんなふうに出てくるのか・・・。
 人によって「原動力」はいろいろだが、共通しているのは、人に対しての「自分の役立ち感」のような気がする。もし、この地球上に自分が独りぼっちで取り残されたら、人は明日を夢見て何かに頑張れるような力が出てくるだろうか。「誰かのために」自分がいるから自分自身の良さをも大事に生かそうとし、そこから気力も沸いてくるのではないだろうか。

国崎翠さん 今回のゲスト、苫小牧高専の5年生、国崎翠さんの話を聞いて、そんな「役立ち感」と「自己肯定感」との繋がりを考えていた。

 国崎さんは、「子供たちが計画を立て、子供たちで活動する」ボランティアクラブ「SYD北海道クラブ」の代表をしている20歳の学生。ふんわりとした笑顔が人を癒す静かな佇まいが印象的だが、思いを真っ直ぐに語ってくれる強い意志を持った素敵な女性だ。
 道内の障がい者施設や高齢者施設へはもちろん、今年は福島へも炊き出しの手伝いに行ったり、フィリピンはマニラの貧困地域の子供たちを手助けするためのボランティアも行っている。
 なぜ、彼女がその年齢でボランティアの先頭に立つという活動を行っているのか、どんな気づきがあって突き動かされたのか、私はそこが知りたいと思っていろいろ訊ねてみた。
 ボランティアに目覚めたのは、小学校4年生の夏、白老町で行われた公益財団法人・修養団(SYD)の障がい者との自然体験キャンプがきっかけ。それまでは障がいを持つ人に対して少し構えたところがあったそうだが、一緒に料理をしたり、カヌーや乗馬などのスポーツを一緒に楽しむうちに「みんな一緒なんだ」と感じ、さり気ない毎日の中で何か役に立つことがしたいと思うようになったと話してくれた。
 インタビューの録音が終わった後で、もう少し突っ込んで訊いてみた。
 「翠さんはその頃、どんな子どもだった?」
 お兄ちゃんの後を追いかけて遊ぶ、とてもお転婆で活発な子どもだったそうだが、さらにこんな子ども時代の心境を紐解いて話してくれた。
 「実は、反抗期がとっても早かったんです」と。
 十歳になる位にはもう反抗期が訪れていて、親に対してすべて「ノー!」を言い続けた頃があったという。なぜなら子ども扱いされることにとても不満だったから。
 「十歳位というと、白老の自然キャンプでボランティアの楽しさに目覚めたのも同じ頃?」
 私のその質問に、国崎さんはきらりと目を輝かせてこう言葉を繋いだ。
 「その頃です。そんな反抗期の中で、初めて『小さい自分でも必要とされている実感』をボランティア活動で感じたんです」と。
 「子ども扱いされることへの反抗期」と「初めての自分の役立ち感」、そのふたつが十歳前後というキーワードで繋がっていることがとても興味深い。

 ふと、少し前に読んでいた、心理学者ユング研究の学者である河合俊雄さんの「村上春樹の『物語』~夢テキストとして読み解く」(新潮社)という本の中の「心理学では、十歳頃において、自分で自分を意識するという自己意識が確立される」というフレーズを思い出した。
 河合さんは「なぜ、十歳位のときに、共同体や親からの自立の動きが生じてくるのであろうか」という問いを立て、この「自己意識」は、子どもから大人への成長に関しては遙かに重要なことなのだ、と記している。
 ユングの表現によると「私は私自身に出くわしたのである。以前は、あれやこれやをするよう命じられていたのだったが、今や私は、自分の意志を働かせるようになったのだ」。
 河合さんはこう続けている。「このように自己意識が確立されるからこそ、これまでのように親などに命じられたままに受動的に生きていたあり方を脱して、『自分の意志を働かせ』て生きていくようになる、つまり自立が可能になるのである。・・従って十歳こそ、ある意味で本当の自分の人生がはじまる時なのである」と。
 国崎さんの反抗期は、「自分の意志を働かせるため」のもので、ボランティア活動との出会いは、改めて「私自身に出くわすため」の大事な要素だったのだと考えると、今の20歳の彼女の活動を支える強いものの源が見えてくるような気がして、私の中でも発見の多いインタビューだった。
 そしてまた、同時に、じっとその自立の過程に寄り添っていらした親御さんの素敵な向き合い方が透けて見えるような気がしていた。

国崎翠さん 国崎さんは言う。「ボランティアを『してあげた』と考えるのではなく、『自分磨きをさせて貰った』と考えると、相手も自分も気持ちいいと思う」と。
 若い頃はとかく自分の存在の尊さを忘れ、なんて自分はちっぽけなんだろう・・などと思ってしまいがちだが、国崎さんのように実体験としてボランティア活動を取り入れることで、人を支える自分の役割を認識し、自分の存在をも尊いのだと感じることが出来る。そして、そこから自己肯定感に支えられた自信も湧いてくる。
 そこが『自分磨き』の真骨頂なのだと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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