5月22日放送

 3年ほど陶芸を習っていた時期がある。
 お皿や茶碗も作ったが、自由な雰囲気の所だったので、その時飼っていた大型犬をモチーフにして、土をこねこね、形作って焼き、独特の雰囲気が出てくると、わくわくニンマリとしていた。
 ふさふさした毛を1本1本流れるように形作ったり、ひいてはミニチュアのえさ入れや、犬の噛む骨の作り物まで作って自己満足に浸っていた。
高山美香さん そんな話を挨拶変わりに、「ちまちま人形」の高山美香さんに話すと、一言、「同じ匂いがしますね~」と、まるで昔の部活動の仲間の再会のように、ちまちま対談は始まった。

 札幌のイラストレーターの高山さんが文豪や偉人の人形を作り始めたのは、イラスト仕事の疲れを癒すために、小物を遊びで作っていたことがきっかけだったそうだ。
 ミニチュア小物をカフェなどで展示し始めて、人物もあったほうがいいと実在の人物を作ることに。
 似せようと作った最初の芥川龍之介が、全く無表情で味気なかったことから、これではダメだと徹底的にリサーチを始めたそうだ。
 その人を知らないと表現できないと気づいた高山さんは、1人30冊ほどの本を読み込み、生活や習慣、好物を浮き彫りにしていく。そうやって、今まで120体余りの歴史上の人物+1匹(※)を制作したという。(※昭和の初め頃、小樽で活躍した消防犬「ぶん公」)

 この偉人はなるほどそういう人だったのかと唸るような、高山さんの表現する人形の詳細はここでは割愛するが、その徹底した人間観察から気づいた「何かを成し遂げる人が持っているもの」の話がうなずけた。
 世に名を残した人は、皆どこかの時点で「とっても好きなこと」を見つけている。そこからとてつもなく大きなパワーで突き進んで行くのだ、と。(時には周りの人を蹴散らしながら)
高山美香さん そして、高山さんの人に対する目が温かい。
 「どんな人でもいろんな面がある。ある一方から見るとイヤな人でも、その理由が必ずある。その元を辿っていくと、皆愛すべき人の面が見えてきて、皆好きになる」
 “いいところ探し”の達人なのだ。
 高山さんの人形を見た人は、何かほっとし、クスッと笑い、人間っていいな~とあったかい気持ちになる。ただ似せて作ろうとするのではなく、どんな人かを調べつくして、「知って」「好きになって」から作る。その見えない準備の集積が、人形を人間らしく佇ませるのだ。

 ああ、私の仕事の「インタビュー」と似ているなと、ふと思った。
 その人のことを「知らない」では、表面的な話になってしまう。
 ちまちまとその人に関する資料を読み、書いたものを読み、いろいろな角度からその人のことを想像してみる。興味がわいて、調べれば調べるほどその人物が魅力的になってくる。
 面白いことに、お会いする頃にはとても好きになっているのだ。
 そして、実際に対談をさせていただくと、その人その人の経験からの言葉により、思っていた以上の人間味が醸し出され、また、好きになる。
 そうか、インタビューも「ちまちま」作業の集積だ。
 おひとりおひとりの最もその人らしい魅力的なところに光をあてられたらいいなと思う。
 ご自分でも、もしかしてまだ気づいていない「いいところ」や「力」を掘り起こすような、そんなインタビューを形作って行けたら、と。

 大きな事を成し遂げるのも、小さな一歩から。
 大きな歩幅より、小さな歩幅の方が、見えてくることもあるというではないか。

 「好きなことを、ちまちまと」は、人のパワーの源だ。

(インタビュー後記 村井裕子)

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