4月3日放送

小檜山博さん 北海道に生まれ、北海道を拠点にしてきた作家・小檜山さんは「熱い人」です。
 小檜山さんの中に1本真っ直ぐな基本軸があることがお話を聞いていて伝わってきます。それは、デビュー作「出刃」で世に出た時から全く揺らがない心の大黒柱のようなもの。
 小檜山さんは言います。
 「今の社会の基本軸は、社会が機械文明と経済を発展させ、お金ですべてが叶うという幻想の中でずれてしまっている。本来真ん中にあるべきその軸を誰かが戻さなくてはならない。青いと言われようが、ここ30年位でずれてきたものを見直したい。人生いかに生きるべきかを伝えていきたい」と。
 その熱い思いはどこに根ざしているのかを伺うと、やはり滝上町での暮らしが原点であることがわかります。
 「貧乏が僕の財産なんですよ」という、「貧乏」と「財産」という一見相反する言葉が、ストンと胸に落ちます。
 「貧しさによって辛さを経験したからこそ、親の愛を始め、周りの人たちの優しさが身にしみた。滝上での貧しさが基本にあり、人の愛情、優しさを人の3倍感じる体験をした。そんな生い立ちで得た、人間が本来持っている良さを自分は書く」と。
 その貫く1本の軸の「熱さ」は、「温かさ」であることにも気づきます。
 小檜山さんが話される中には、「人」というキーワードが何度も何度も出てきます。
 ・・「人間はひとりでは生きられない」が、僕のテーマ。
 ・・物質社会を支配しているのは科学と経済。こういう時に何をしなくてはならないか。
 それは「人とかかわること」。
 ・・「生きる力を与える3つの力」とは、人の心を分かる力と人と協力し合う力。
 そして、感情をコントロールしようと意識する力。

小檜山博さん 私が、JR北海道車内誌に毎月掲載される小檜山さんのエッセイ「人生賛歌」に心惹かれてきたのも、生きることに必死な環境だからこその温かい人と人との心のやりとりに、何か大切なものを気づかせて貰ったからなのかもしれません。
 今回のインタビューでは、その「人生賛歌」の中から私自身がとても感動した『ある読者』というエッセイについての思いも伺いました。
 高齢の靴磨きの女性がその道ばたで読んでいた本が、偶然にも小檜山さんの作品であり、「私はこの人の本を読むと死にたくなくなるんです」と言われ、凄い読者がいると驚く。
 苦労を重ねてきたというその靴磨きの女性の思いに触れ、ひとりの人生を左右しているという重みを感じた小檜山さんは、小説を書いてきて良かった、それまでの自分を変える出逢いになった、と深く感じたそうです。
 人は人と生きている。つながっている。そして、その出逢いは、時として偶然の力を借りて引き寄せられ、「だから人生は大丈夫。困難も沢山あるけれど、こんな邂逅もあるから生きていることは素晴らしい」とメッセージを送ってくれる橋渡し役にもなる。
 小檜山さんとある読者との偶然の巡り合わせに、私はそんな確信を得ていました。

 小檜山さんの35年の作家人生。困難な体験に遭遇した時、前に進む原動力になったものは何かとお聞きすると、それもやはり「人のつながり」だったと話してくれました。辛い思いをした時、それでも前に進んでこられた力の源は、家族であり、そして、やはり多くの読者の力強く温かい支えだったそうです。

 小檜山さんの心の真ん中の軸を語るときのキーワードは、一貫して「人」でした。
 「生きる力を与える大切なものは、人の心を分かり、人と協力しあい、感情をコントロールしようと意識する力」
 今、私たちの国が、未曾有の災害から立ち上がろうとする過酷な状況で、小檜山さんのこの言葉はさらに意味合いを増していくに違いないと共感し、こちらの思いも「熱く」させられたインタビューでした。

(インタビュー後記 村井裕子)

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