村井裕子のインタビュー後記

はじめに
毎週日曜朝9:30から放送の『ほっかいどう元気びと』では、様々な場で活躍している人たちへのインタビューを通し、「人が前に進む力はどこから出てくるのか」「人は逆境や困難な時にどんな発想で切り抜けるのか」など、それぞれが辿ってきた道のりから、その原動力にスポットを当てています。

東日本大震災が起こってまだ日が浅い2011年の春から、この番組は始まりました。
世界が大きく変わってしまった中で、私たち皆がひとりひとり、「自分は何が出来るのだろう」と様々なことを真剣に考えるようになっている中、この番組でも、「大事なことはなんだろう」「気づかなくてはいけないことはなんだろう」という視点で、これから先の前に進むヒントを探していきたいと考えています。

人の中には、自分でもまだわかっていない新たな「力」が隠されています。それは、順風の時には案外見つけられないもの。逆風だからこそ発揮出来るものがあるはず。

そんな、人の中の「宝もの」に光をあてることで発せられる言葉の数々に、ラジオをお聴きの皆さんと共感することが出来たら幸いです。

「村井裕子のインタビュー後記」は、対談後、そんな言葉の数々から、私自身が感じた「大切なこと」を毎週綴っています。番組を聴いた後に、その言葉たちをもう一度噛みしめる、心豊かな場になりますように。

1月15日放送

 前回のゲスト、札幌新陽高校女子硬式野球部の監督としてこの春から始動する石井宏さんのインタビュー後記を書いていて、ふと、私の中の「2017年のめあて」となるキーワードが浮かんできた。それは、「根源的である」ということ。石井さんの“道を切り開く法則”として「こうしたいと思うことを公言する。しかし、そのためには当たり前のことを“ちゃんとやる”ことが大事。好きなことならそれが出来る」と話されるのを聞いて、ほんとうにその通りだと感じ、ここのところよく考えていたことともそれは繋がると腑に落ちたのだ。
 私の中の「根源的である」というイメージは、“よけいなものを削ぎ落とす”ことで“本質を見定める”ということ。そのために“自分の内部の声に耳を澄ます”ということだ。外側からの様々な刷り込みや既成概念をどんどん剥がして、自分の根本が何を感じ、何をしたいのかをクリアにすること。そうすることでほんとうにするべきことも浮き彫りになり、さらなる真の“役割”を深めていくことも出来るだろう。すっきりと沢山のものを外した「根源」に翼を付けて羽ばたく・・・この1年は、そんなイメージで何か確かなものに向かっていきたいと感じている。それは、個人もそうだし、世の中もそうではないか。いろいろな雑念にまみれてああだこうだと右往左往、右顧左眄しているこの世界。そろそろ、自然は、地球は、宇宙は「根源的にどうなりたいのか」、その上で人は何をすればいいのかと問うてみてもいいのではないか・・・などとも思ったりする年の初めである。

川島美奈子さん 「ほっかいどう元気びと」に出てくださる方々とお話をしていると、そんな根っこのところをイメージすることが出来る。ビジネスとしてこう・・・とか、経済発展のためにこんなチャレンジを・・・といった枠組みを超えて、「なんだか突き動かされてこの活動を・・仕事を」という方が少なくない。“突き動かされる”ということはそれこそ「根源」からの何かだ。
 今回のお客様は、人々の「快眠」のために活動をしている人。「一般社団法人 日本快眠協会」のスリープマスターで、札幌を拠点にセミナーなどを開いている「smileep(スマイリープ)」代表の川島美奈子さん 49歳。活動の根底にあるものは、「眠りで悩んでいる人を何とかしてあげたい」という思いであり、それによって皆が生き生きと笑って暮らせるのではという穏やかな世の中への願いだ。どんな“突き動かされ方”をしたのかお話を伺った。
 川島さんは、結婚前に10年間寝具メーカーに勤め、子育てが一段落した後に再び仕事を再開したとのことだが、お客様の中で「眠れない」と悩んだり不安を感じたりする人が少なくなく、快眠のためにはもちろん寝具の快適さも欠かせないがそれ以外に大切なことがあるのではないかと、名古屋にある「一般社団法人 日本快眠協会」の認定資格を取得するために学びを始めたのだそう。講習の場所が名古屋と遠いために、スカイプで受講出来ないかと掛け合い1年間北海道から電話で参加。眠りのためのありとあらゆることを学んだことで、いい眠りのためには“眠れる体の作り方”というものがあることを知り、その方法を実際に伝えなくてはと、「smileep(スマイリープ)」を立ち上げて活動を始めたという。
 川島さん自身も仕事を再開させた頃に、夫の単身赴任や2人の小学生の子育て、夫の親の入院に自分自身の更年期も重なって、夜中の同じ時間に目が覚めるという日々に悩まされたのだそう。その時はとても辛かったというが、眠りについて学んでみるとその頃の自分は “頑張ることは美徳だ”と自分を労ることもしていなかったと気づき、同じように辛い思いをしている人に「自分の体について気づいて貰いたい、眠れる体のための簡単な方法を身につけて貰いたい」と強く思うようになったのだそうだ。
 その方法というのも幾つか話してくれたのだが、すぐにでも簡単に出来るのは布団の中でゆっくりと腹式呼吸をするということ。息を吐くことがリラックスに繋がる副交感神経を優位にするので、ゆっくりと吐く。呼吸に集中することで、「あの時はああだったこうだった、こうしたらよかった」など、頭の中でクヨクヨと考える隙間を作らない利点もある。
川島美奈子さん 収録後にも、足裏に体の変化は現れるので触ってみて硬くなっているところを揉みほぐすということや、自分で自分の体の変化を捉えるためのちょっとした時間の取り方など、個々に出来る“眠れる体作り”の方法を話してくれた。そんな話の中で最もなるほどと思ったのは、人は頭で「リラックスするのがいい」と思っていても、体は簡単にはゆるまない。だからそのための方法を知って日々に生かすことが大切なのだということ。
 それこそ、頭で考えることを一旦止めて、体がどうして欲しいのか、何を求めているのかに耳を澄まし、適切な対応を体に染みこませるということなのだろう。体にむち打ち、24時間働ける・・・などという無茶な頑張りを美化していた時代は過ぎ去って、自分の体に気づけるかどうかの智恵が試される時代。そこから意識が変わってくると自然に眠れるようになってきますと川島さんは言う。ご自身でもかつてはそうだったと話されていたが、川島さんの思いは、がむしゃらに頑張りすぎて心身を消耗させる人を1人でも減らしたいというところにあるのだと感じられた。糸が切れてしまうまで追い込む前に自分を労る方法に気づいて欲しいという、この時代へのメッセージなのだとも。

 ここのところ、「マインドフルネス」という言葉も頻繁に耳にするようになった。過去にとらわれず、未来を不安がらずに、「今、ここ」に生きられるためのものごとの捉え方やそのためのちょっとしたトレーニング方法だ。「快眠」のための学びや、思い込みや心を縛る考え方からマインドフルになるノウハウといった新しいアプローチが次々に出てくるというのは、やはり、不安や迷いの時代だからなのだろう。ひとつの不安がまた次の不安を呼び起こして、どんどん雪だるまのようになっているのが今の世の中。気づいてみれば、今必要とされるどのアプローチも結局は、「無駄なものを外して、根源に一旦立ち戻ろう」ということなのではないか。・・・大事なことはやはり根本で繋がっている。
 世界も社会も益々不穏なニュースを運び心配の種は尽きないが、こういう時こそ、漠然とした不安の雪だるまの真ん中には一体何があるのかという「根源的」なものを見つめる目を養わなければ。そして、何より、身体をきちんと養生させ、その上で一歩一歩をちゃんと踏みしめていくことを蔑ろにしていてはいけない。
 “眠れる体”というキーワードからそんなことを感じた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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