ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30?9:50

2018年5月20日のゲスト

Satolyさん
アーティスト
Satolyさん

根室市出身 32歳。
高校卒業後、東京の看護学校に進み、地元根室の病院に看護師として勤めるが体調を崩し休職。その間に絵を描き始める。
2012年に病院を退職し、翌年から自身の作品制作と、ボランティアで障がいを持つ子供たちの元へ出かけ絵のワークショップを行ことに専念する。
2017年からは「よしもとクリエイティブ・エージェンシー」に所属し、目に見えない心の傷をアートの力で癒したいと国内外で活動中。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

 毎日洪水のように流れてくるニュースや情報に触れていると、何ともため息をつく気持ちの連続になる。なんでこんなに呆れることばかりなんだ? なんでこんなに大人は嘘をつく? なんでこんなに浅はかなことをする?・・・なんで、なんで・・・?
 時には、あえてそれらを必要最小限にとどめ、情報の洪水から心理的に離れるようにしている。心が消耗し過ぎないように。世間に文句を言い続けるだけの日常にならないように。・・・そうして、そういう時には、優しい音楽に耳を傾ける。絵を眺める。本を読む。時間と思いが詰まったドキュメンタリーを観る。真摯な仕事の人を思い出す。今は亡き可愛がった犬の感触を思い浮かべる。・・・書いていて気が付くが、無意識に求めるのは“魂が込められたもの”に浸るということかもしれない。魂が込められた、或いは、魂が宿った何かで、心を整えるということ。
 きっと、この人の仕事も、そういう“込め方”をしながら日々を紡いでいるのだろうなと感じさせていただいたのが、今回のインタビュー。

Satolyさん お話を伺ったアーティスト・Satolyさん(32歳)は、障がいを持つ子供達や病気の子供達の元に出掛けて行き、絵のワークショップを続けている。胸の中にあるのは、「目に見えない心の傷を癒したい」という熱い思い。根室在住だが、年間100日は道内外の盲学校や壟学校、病院、さらには海外の障がい者施設をボランティアで回っているという。携えて行くのは、目が不自由でも絵の楽しさが実感できる「触れる絵」を描くための特殊なモコモコペン。アートを“ツール”にして子供達に寄り添い続けるSatolyさんの原動力を訊いた。
 Satolyさんの社会人としてのスタートは看護師。人のために働く慈善活動をしたいという思いが元々あってのことだったそうだが、体調を崩して休職。その間に絵を描くことに取り組み始め、やがて病院を辞めて今の活動を本格的に始めていったのだという。ボランティアを続けるための資金はひとつには自身が描く絵の売り上げ。Satolyさんの世界観が込められたその絵は、主として黒いペンで描かれた独特の雰囲気を持つもので、収録後に、絵に込めているテーマは何かと伺うと、「命の尊さ」だと言う。ジャンルを「動物」「植物」「虫」「宇宙」「神」「恐竜」などに分け、“人間だけの地球ではない”ということを伝えたいと話す。だから、描きたいのは“人間以外のもの”なのです、と。
 そうして、全体の活動の先に目指しているものは、ひとりひとりの心が優しくなることで世界が平和になること。そのために、心に傷を負っている子供達をアートの力を通じて癒し、後押ししたいのだという。

 ボランティアをするということは、「してあげているのではなく、させていただいている」とその喜びを皆さん口にされるが、Satolyさんは、「ご自身が得るものは?」という問いに、「それはもう沢山ある。それがなければやっていません」と力を込める。
 お話を伺っていると、例えば、「目が見えない」というのはハンデキャップと見られているが、違う能力を彼ら彼女らは秘めていて、実際に行動を共にしていると確実にその世界の深さに触れて感動する。その経験が得難いのだという思いが伝わってくる。
 例えば、訪ねた先で知って感動したというエピソード。ひとりの女性が実は元気があまりないのだが、赤い服を着ているので目が見える人はその赤によって「この人は元気だ」と思ってしまう。でも、目の見えない子供はその赤い服に惑わされずに、声の調子や気配、雰囲気でその人の元気のなさを察することが出来る・・・といったこと。そういう、目に見える色や形に惑わされずに感じる心を“障がい”を持つと言われる人たちが何かしら持っている可能性があるという発見。アートというツールだからこそ、そんな“超感覚”に遭遇し、健常者と言われる人達とはまた違った世界の深さを知ることが出来るのだろう。Satolyさんの原動力はそういったことで醸成され、そしてパワーアップされているのだと強く感じた。

Satolyさん 世の中の大人達の役割は、子供達を守ること。子供達ひとりひとりの命を守り、魂を守り、輝かせること。それも、ひとり残らず。これが叶わない世界は「幸せ」とは言えない。だが、叶っていない現実。戦争、紛争、貧困、虐待、障がいによる差別。地域や家庭の中ですら安全地帯ではなく、施設の中ですら心に傷を負うことも少なくない現実。・・・だからこそ、人の“魂を込めた仕事”が大事なのだと思う。例えば、それは、Satolyさんのような「目に見えない心の傷を癒そう」として行動している取り組み。
 Satolyさんが、「よしもとクリエイティブ・エージェンシー」の所属になったのは、ある出会いから話をすることになった吉本興業の社長に、「この活動は絶対世界になくてはならないもの」と夢と志を語ったことで実現したことなのだそう。「そんなら協力せねばならんな」と申し出てくれたのだという。
 「不思議なんですが、協力してくれる人はそういう出会いばかり。先日の名古屋のデパートでの個展も、たまたま新幹線で隣り合ったおじさんに夢を語ったら、その人は画廊のオーナーで、道筋をつけてくれたんです」
 そんなエピソードを聴くと、世の中はやはり“魂の仕事”を求めているのだと心の底からほっとする。
 時々目を潤ませながら子供達のことを話すSatolyさんと数時間を過ごし、私が放送の仕事を選んだのは捨て子の問題を扱ったTVドキュメンタリーを見たのがきっかけだったことをふいに思い出した。この欄でも書いたことがあるが、その時代の社会問題にもなったロッカーに子供を捨てるという現実、その子供の心を想像して胸が張り裂けそうになり、乳児院で働こうとまず思い、そうして、いや、そういうことを真っ直ぐに報道する仕事に就きたいと思い直して、放送の仕事を選択した。
 世の中はとてもじゃないけどひとりの力では変えられない。だけど、ひとりひとりが何かを込め続ければ変わっていくと信じるしかないのだろう。戦争と平和、病気や障がい、理不尽なこととの闘い、目を瞑ってはいけない大切なことをテーマにした番組に関わるという初心を大事にしながら、私は私の“魂”を込めていこうと、また、インタビューで力をいただいた。

(インタビュー後記 村井裕子)

過去のゲスト・インタビュー後記はこちら

パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

メッセージ募集

番組では、みなさんからのメッセージを募集しています。メッセージフォームからお送りください。

メッセージフォームはこちら

HBC TOPRadio TOP▲UP