ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30-9:50

2019年3月17日のゲスト

大川 直久さん
地域交流地点
「コミュニケーションクラブOoTS(オーツ)」代表
大川直久さん

恵庭市出身・江別市在住 61歳。
「北星学園大学文学部英文科」を卒業後、北海タイムス社に報道記者として入社。1987年に江別支局に赴任したのをきっかけにまちの魅力にひかれ、1993年、新聞社を退職し江別市役所に勤める。
その後、企業立地課長、広報広聴課長として地元の魅力を発信しつづけ、去年定年退職を機に自宅の一部を改装し「コミュニケーションクラブOoTS」をオープンした。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

大川直久さん 「村井さんが後記に書いている“一隅を照らす”、その考え方いいですよねぇ」
 『ほっかいどう元気びと』、今回のお客様の収録前の一言だ。インタビュー後記から響いた言葉をご自身の思いと繋げて伝えていただける嬉しさは前々回も書いたが、「放送という音の発信」×「書くという文章の発信」によって受け取り手の中に何らかの“化学変化”が起こっているとしたらなんとエキサイティングなことか。勿論この言葉は平安時代の僧である最澄のもので私は単なる伝え手でしかないのだが、言葉になっていない事象に表現を当てはめる役割を僅かでも担えているとしたらそれは最上の喜びだ。
 今回の「元気びと」は、まさに、ひとりひとりの何かしらの役割を見出し、そこから様々な人の繋がりの可能性を生み出そうとする江別市の「コミュニケーションクラブ OoTS(オーツ)」代表 大川直久さん 61歳。後記のキーワードをご自身に引き寄せて考えてくださって有り難いと伝えると、「“役割”があるってほんと大事。僕も役割があってやらせられているという気がするからさ」と気さくで明るい返答。惚れ込んで住んだという江別でどんなふうに“自分の灯りをともそう”としているのか、興味津々訊いていった。

 大川さんの経歴は、もともとは新聞記者。江別支局に赴任したのをきっかけに町の魅力に惹かれて新聞社を退職し、江別市職員として町づくりに力を注いできたという。
 「コミュニケーションクラブ OoTS」を立ち上げたのは60歳の定年後。時間を有効に使うために何が出来るかを考え、人や情報が集まる拠点づくりを思い立ち、自宅の倉庫を改装した“大人のたまり場”を実現させたのだそうだ。コーヒーと手料理を出しながらも、カフェではなく、コミュニケーションクラブ。記者、そして市職員時代に培った人脈で、友人や知人、さらには、こういう人がいると聞きつけて大川さんに会いに来る人もいるのだとか。交流地点として学びの会や趣味の会、また、お年寄りや学生達にも集ってもらいたいと、繋ぎ役としての可能性を楽しそうに語る。
 これまでの仕事の新聞記者も市職員も“接客業”なのだと話す大川さん。人と人、人と産業、産業と町とを繋ぐという「人と情報」が一貫するキーワードであり、それを定年後も続けていくのが自然の流れですと続ける。
 「それは役割分担かな。自分が生かされているというか・・・」
 その役割の先に見えているものは何か? という問いには、江別の大学で学んでいる若者達が江別の良さに気づいて定住し、そこから新しい産業が生まれていくような町づくりに繋げていきたいというイメージを話されていた。江別の魅力に感じ入って市職員としての第二ステージを送った大川さん。どういうところに可能性を見出したのかと訊くと、こんな表現が返ってくる。
 「個人的には札幌の副都心になり得ると思っている。自然環境は子育てにもいいし、大学が4つもある。さらに、前職、前々職を通して魅力的な人達に大勢出会ったこと」
 そして、こんな興味深い考え方も。
 「札幌に人は沢山いるが、きちっと対話できる距離ではない。江別は対話する人の距離が短いんです。江別は“人は少ないけど、人はいる”」
 新聞記者としての経験で、記事への反応の濃さが札幌とは格段に違ったのだという。だから、こんなことをやりましょうと言うとあうんの呼吸で実行に繋がるという町の規模が心地良いと。思わず私の中で湧き上がった「お喋りではなく、会話、さらには対話ができることこそが大事。その距離感が面白い」との感想を伝えると、「やはり、町づくりは人と人が話すことから」という大川さんの思いも言葉になり、放送時間が足りなくなりそうと内心思いつつ、これからの地域に大事なもの、そして、そこに生きる個々の生き方の大切さについても話は繫がっていった。

大川直久さん 『ほっかいどう元気びと』のおひとりおひとりは、まさに、ここ北海道の、自分の居場所で、自分のやり方で、こんなことをしてみていますよ・・・という「一隅を照らす」の“活動サンプル”そのものだ。
 これまでも後記で書いてきたことだが、今の世の中は“今いるここ”から“さらにその先”を皆が模索しつつ、既成概念を取っ払った様々なトライアルが必要な時代。例えば、行き詰まっている“資本主義のその先”にどういうアイディアや仕組みがあり、どういう働き方があり、どういう人の幸せをつくりだしていくのか・・・という目線が個々にも求められていく。
 この、“その先”のためにこれまでにない発想で行動を起こそう、しかも、“東京ではなく地方で”という新しい価値観の意味付けは全国的にもひとつのテーマになっているようで、先日読んだ『鎌倉資本主義』(プレジデント社)の中にもそういうことかと腑に落ちるキーワードが書かれていた。著者は「面白法人カヤック」代表取締役CEOの柳澤大輔さん。“日本中が東京になったらちっとも面白くない”という発想で、都心から離れているぶん不便な鎌倉に会社を構え、同時に高齢化問題も抱える町の創生にも取り組む。それはそのまま、資本主義が抱えている課題に向き合うことそのものであり、これからの、仕事、町づくり、そして、“幸せの指標づくり”のチャレンジなのだという実践の記録と提言の書だ。
 「鎌倉資本主義」の骨子というのは、「地域資本」という考え方。これまでは、経済資本という“財源や生産性”ばかりが価値として求められてきたが、今まであまり言われてこなかったもう2つ。地域社会資本である“人のつながり”と地域環境資本である“自然や文化”の重視。その考え方が「鎌倉」だけでなく、さまざまな場所ごとの地域資本主義として発信される社会になったら面白い・・・とのこと。
 そのためのキーワードが、まずは“誰とするか”、そして、“どこでするか”が最重要。今まで優先事項とされてきた“何をするか”は、“誰と、どこで”が決まれば自ずと見つかるものだという発想は40代のCEOならではと感じたが、それはそのまま、江別の大川さんの活動の“その先”ともシンクロしている・・・と気づかされる。
 地域交流地点「コミュニケーションクラブ OoTS」も最優先は“人”。そして、規模の大きい札幌都心より人の声が届きやすいという江別という場所へのこだわり。まさしく、“誰とする? どこでする”方式の「江別主義」。“何をするか”はそこからの化学反応次第。それを面白がるという共通項もこれから益々大事な要素に違いないと合点する思いだった。

 “人と人の繋ぎ役”で一隅を照らしたいという大川さんの取り組みは、「OoTS」のT(点)とS(線)に込められているように、やがて、ひとりひとりの点を線で結び、新しい産業を生み出すきっかけにもなるかもしれない。順番は“生産性ありき”ではなく、江別という場を楽しみながら“誰と誰を繋げよう”という楽しさが先。それは、これからの町づくりのひとつの仕組み作りのヒントになっていくのだろう。
 そして、「一隅を照らす」は、けして“独りで灯りをともしている”わけではない。その“電源”はすべて繋がり、補完し合って光を放つのだということも改めて感じさせていただいた。

(インタビュー後記 村井裕子)

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パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

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