ほっかいどう元気びと

日曜日 あさ9:30-9:50

2019年9月22日のゲスト

藤本 研一さん
「作文教室ゆう」代表
藤本研一さん

兵庫県出身 31歳。
早稲田大学・早稲田大学大学院を修了後、 札幌と帯広でそれぞれ2年間、高校教員として勤めたのち独立。
2016年「作文教室ゆう」を立ち上げ、社会人を対象とした1対1での指導や企業での研修を中心に書くことの大切さを伝えている。

radikoのタイムフリーを使用すると、放送終了から1週間ほど番組を聴くことができます。

村井裕子のインタビュー後記

藤本研一さん 今回の『ほっかいどう元気びと』は、札幌の「作文教室ゆう」代表 藤本研一さん 31歳。高校教諭の頃に文章を書くことが苦手な生徒達を見るにつけ、履歴書や試験の小論文で自分の思いを文章に出来なければその後の進路も厳しいものになると痛感し、退職して個人で実用文を指導する塾を開設。マンツーマンの添削指導や講座、研修などで、書くことの重要性とその方法を教えているという。個々の文章表現力を引き出すその思いを伺った。

 藤本さんの文章指導の最も得意分野は、一対一で添削をしながらその力を引き出すというもの。実際に書いてもらった文章に“赤”を入れたり一緒に表現の言葉を探していったりしながら、“何を書いたらいいのか”“何を伝えたいのか”のポイントを個々に見出してもらうのだという。藤本さんは熱を込めて言う。「いいものを沢山持っているのに、自分の中に留めているだけでは伝わらない。自分の良さを表現出来れば社会での評価も変わってきます」と。そして、「“てにをは”の使い方以上に大事なのは、“自分が何をしたいのか、どうなりたいか”を見つけていくということ」。その表現方法の指導は勿論、書くことを通してその人自身が自分の“強み”に気づいていくようなサポートをしたいと続ける。
 その思いの背景には、藤本さん自身が、“書く”実践で自分の内側に気づいていった体験があるという。高校教諭を辞めて塾を立ち上げたとはいえ、認知されず、全く人が来ない日々に直面。そんな折、あるブログセミナーで「365日、毎日ブログを書き続ければ人生が変わる」という講師の言葉に触れて一念発起。言葉通りに続けるうちに、札幌に作文教室があるという周知に繋がり、少しずつ軌道に乗っていったという。その実践で藤本さん自身の内面はどう変わったのかを訊くと、「それまでは自己中心的な考え方だったのが、書き続けることで読み手が何を求めているかの視点が生まれ、気づくと“相手目線”になれていた」とのこと。何事も“自分が自分が”だったのが、人の役に立ちたいという思いが引き出されたのが大きな気づきだったと話す。
藤本研一さん 収録後に語ってくれたのが、学生の頃の“挫折経験”。早稲田大学、そして大学院を修了後に教員になったという藤本さんだが、「出身地の兵庫県から東京に出ると周りにはすごい人ばかり。自分なんてダメなんだと思い込み、挫折感で一杯でした」。そんな思いや独立後の不安な気持ちも体験したからこそ、“書き続けることで自分自身がより良くなっていく”という実感を得ることが出来たのだと思うとその時の心情を言葉にする。今、作文教室で教えているのは“実用文”だが、根本にあるのは、「文章で人はより良くなっていく」という思い。例えば、自分史やエッセイ指導などで、最初は抱えているモヤモヤや辛さばかりを口にしていた人が、思いを言葉にすることでそれまでのネガティブな感情が整理され、書き終わる頃にはスッキリした表情になる。そんな変化に触れることで、「辛い記憶も文章で乗り越えることが出来る」という確信を一層深めてきたのだそうだ。目の前の人が、“書く”という作業を自分のものにしていくことで、その内側がより良く変化していくというやりがい。だからこそ、マンツーマン指導が得意分野という言葉の意味が腑に落ちる。

 言葉というものを人一倍大切にされた作家の竹西寛子さんの『言葉を恃む』(岩波書店)という講演録の中に、こんな表現がある。
 「・・・言葉で自分を探していくということは、自分を通して、この分かるようで分からない宇宙のなかに入っていくことでしょう。そのなかでの自分の位置を、在り方を知らされることですね」
 だから、言葉をいい加減ではなく使えるようになりたい。ものの見方や聞き方というものをなるべく曖昧にしない、いい加減にしないことを大事にしたいのだと記されている。書くこと、話すことにきちんと向き合うことは、自分と向き合うこと。伝える仕事を選んだ私自身の指針にしていきたいと思ったことを、藤本さんとの収録で思い出させていただいた。

  このインタビュー後記も、「文の巧さ」など望むべくもないが、とにかく、「毎回“流さずに”ちゃんと書く」との自分への約束で書き始め、2011年4月の番組スタートから藤本さんの回で443本目になる。読んでくださる方にとって分かりやすい筋道と文脈をと、推したり敲(たた)いたりの七転八倒の毎週だが、私の中での収穫はとても大きい。ゲストの取り組みや思いから“普遍的”なものを探し、自分の“フィルター”を通して文章化することで、自分自身の考え方の“軸”のようなものが言葉によって再確認出来ることに気づいたからだ。胸の中にある思いや考え方はいつだって漠然としているし、伝えるべきことも“もやっ”としている。その段階から、まずは頭の中で「何を書けばいいか」の“分別”を一歩進め、まだまだ混沌としている中でもとにかく手を動かし文章化し始めると、自分でも気づいていなかったものが浮上してくる(まさに、底の方からふわりと浮き上がってくる感じ)。心の何処かにいるもうひとりの自分によって「今、私は何を大切にしているのか、大切にしたいのか」に気づかされる思いになるのだ。多分、ひとりひとりの胸の中にある“思いの湖”は、思っている以上に深い。表面の色や表情は認識していても、奥底に何があるかは自分でも分からない。長い間に取り込んだ知識や感動や経験という堆積が醸成して出来ているそれぞれの“私自身”。書くということ、そして、話すということもそうだが、その“積み重なっている内容物”を言葉という柄杓で掬い上げることにより、初めてその本質に気づくのだと思う。その中にはキラリと光る“砂金”もきっとある。この後記は、ゲストの“砂金”を言葉にして読み手に伝える取り組みだが、同時に、自分自身の“砂金”をひたすら掘り続ける作業なのだと、こうやって書いていて今回も気がつく。さらに、ひとりひとりの砂金が持つ“要素”を突き詰めて行けば、人が根源的に持つ“普遍”という砂金をも掬えるかもしれない。それを言葉にしていくのは至極困難なことだが、えも言われぬ面白さに満ちている。
 言葉で悩み抜く人か、言葉なんかどうでもいいと思う人か・・・。前者の末席にしがみついていたいと思う。

(インタビュー後記 村井裕子)

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パーソナリティ

村井裕子 フリーキャスター/声と言葉の自己表現「村井塾」主宰

HBCで18年間勤務の後、フリーとして活動。現在は放送や朗読表現活動の他、札幌や帯広など道内各地で「話し方」「朗読」講座を通し、声と言葉の自己表現による人の魅力作りにも尽力する。

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